明るくて切ない映画「少女は自転車にのって」
サウジアラビア映画「少女は自転車にのって」
サウジアラビアでは、女性は10歳になると男性の前で肌や髪の露出が禁じられ、黒いアバヤと呼ばれる衣装で全身を覆います。声も肌と同じ。男性に聞こえるような大きな声で話したり、笑ったりすると学校の先生や母親から叱られてしまいます。婚前交際も禁じられています。
そんな厳しい社会の中にあって、主人公のワジダ(10歳)は、アバヤの下にジーンズとスニーカーを履き、欧米の音楽を聞き、年上の友人の密会を手伝い、校則も破る…と自由にしたたかに、たくましく生きています。ワジダは明るくて活発で、仲良しの男の子と自転車レースをしたいがために、自転車を買うことを決めます。しかし、サウジでは女性が自転車に乗ることはいいことではないため、親には反対されてしまいます。
そこでワジダが思いついたのが、学校のコーラン(イスラム教の聖典)詠唱コンテストに出ること。これまでの悪い子から改心したふりをして宗教クラブにも入り、結果、優勝を手に入れます。ところが、賞金が自転車に使われるとわかったとたん、校長先生の「寄付に回します」の一言でワジダの努力は水の泡と化してしまいます。
この映画は、ワジダの明るい魅力が前面に出ているため、一見さわやかな作品に思えます。しかし、サウジ社会が抱える男尊女卑の問題が浮き彫りになっている作品でもあります。例えば、一夫多妻制。ワジダの母親は、夫の第2夫人との結婚問題に苦しめられます。母子二人で家のベランダから、夫の実家で行われている盛大な結婚式を眺めているとき、ふいに母親がワジダに自転車をプレゼントします。その思いの裏には、娘の幸せと、女性が自由へと解放されるようにという二つの願いが込められているような気がしました。
監督はサウジ初の女性監督で、ロケバスの中から役者さんに指示を出していたそうです。
ちなみに、今年6月にサウジアラビアで女性の車の運転が解禁されました。
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